合同会社自照社

コラム：この道をゆけば ── 相愛大学講師　赤井智顕

まなざし

　「まなざし」という言葉があります。ある対象に向けられた視線、というほどの意味ですが、まなざしはその視線の先にある「いのち」に対して、何かしらの心が込められた言葉のようにも感じるのです。
　「仏身円満（ぶっしんえんまん）にして背相（はいそう）なし」という言葉があります。阿弥陀さまという仏さまは、決して背中を向けられることはなく、いつも私に真向きになって慈悲のまなざしをそそいでくださっているというのです。たとえ仏さまに背を向け、真反対の方向に離れていこうとする私であっても、そんな私をこそ心配し、どうか心豊かな人生を歩んでいってほしいと願い続け、慈悲の心をそそいでくださるのが、仏さまのまなざしだと受け止めることができます。
　私たちがこの人生を生きていく時、本当に多くの方々からのまなざしが向けられています。こころ温まる優しいまなざしもあれば、言葉を失うような厳しいまなざしもあります。もしかすると、時に顔を背けられることだってあるかもしれません。たとえ親子の関係のなかにあっても、悲しいことですが人間の想いには限界があり、いき届かないこともあります。
　しかし、阿弥陀さまのまなざしには何のさまたげも、限界もありません。いついかなる時も、私の「いのち」の上にそそがれ、見護り続けてくださっています。様々なまなざしが向けられている私の人生にあって、決して背けられることのない仏さまのまなざしが今日も向けられていること、そのことが私にはうれしいのです。

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